借景庭園が今や絶滅の際まで… / '18.12.24

クリスマスイブ、いかがお過ごしですか。

私は本日の卒ゼミで、学生と大学近くの名刹・岩倉幡枝円通寺に行ってきました。比叡山を借景にした円通寺の庭園は、知る人ぞ知る、京都の平庭の中では最大級の大きさを誇る空間。大きな比叡山を借景にするためには、それに見合う大きな生け垣・石・木の存在が必要不可欠なのです。

数年振りに訪れたのですが、周囲の住宅開発の影響が強く出ていました。比叡山からの借景の中に建物が入ってくるので、それを視覚的にマスキングするために、生け垣奥の植林の存在がやや強めに現れていました。庭に軽さがなくなったかな。

さらに、周囲に出来た住宅道路の交通量が増えていて、ひっきりなしに車の暗騒音。耳からも重さを感じてしまいました。さらに、高木類も成長してきて、比叡山の稜線に影響を与えています。

ほんの数年ぶりの間なのに、円通寺周辺の環境はどんどん変化してきています。この地に勤務しはじめた20年近く前、円通寺付近は田圃が多かったし、大きな道路もなかったし、植栽もほどよく刈り込まれて、庭園にも絶妙なバランスがありました。

昔を懐かしむわけではないですが、借景庭園そのものが今や絶滅の際まで来ているように思えます。それは、視覚だけでなくて音も…。それでも本日、滞在時のほんの数秒ほど、絶妙な静けさが漂う瞬間がありました。そのタイミングに出会えただけでも、本当にありがたかったです。