医療従事者にとって、音環境の存在は何なのか? / '20.01.22

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関西医科大学の保健学部1年次対象の開講科目「表現とコミュニケーション」で、ゲスト登壇してきました。この学部は開講2年目で校舎もピカピカ。

将来看護師や医療従事者になることを目標とする学生たちに、どうして表現とコミュニケーションが必要なのか。登壇するにあたって、そのあたりの目的設定が重要です。医療空間は高密度に人と人が緊張状態と不安状態で接するしかない究極な空間。その中で、人間同士の齟齬や意思疎通の食い違いなどが発生する。

頭でっかちのコミュニケーションをどう解きほぐし、互いのやりとりを滑らかな手応えのあるパイプのような状態にしていけるのか。身体感覚を十分に生かした表現方法を意識することで、予期せぬ状態で生まれる誤解や伝達不足が少なくなるのではないか、とぼくは思います。

そこで、「音」を意識したワークショップや、互いの感性のやりとりを入れた発想を実践的に紹介しました。視覚からでは届かない人のホンネや環境の変化を、耳を使って感じ取り、記録するという方法を試してもらいました。

最初は???な状態だったのが、次第に感性が解れ出し、周囲の音に意識が向けられるようになってきました。教室内外でサウンドマップ(音の地図)も描いてもらい、それを班のメンバーで鑑賞し合う。自分だけの表現に閉じこもっていたら、感性は育ちません。他人の描いた音の世界に触れることで、一気に自分の枠組みが瓦解し、新たな発見が生まれる。

音のワークショップ授業でいつも思うのは、ぼくは単なる火付け役で、音の感覚を発見し、表現に結びつけるのは、参加メンバーの人間力あってこそ。描かれた作品を見て、勇気づけられるのはぼくの方でした。ご縁に感謝です。