医療空間用のBGMの特徴とは? / '17.11.30

ジャケットオモテ

今回制作完成した医療空間用の環境音楽アルバム『いのちのそばに』。耳原総合病院(大阪府堺市)から要請を受けて制作した音源なのですが、どうして病院空間に「音楽」が必要なのでしょう?

その答えは、実際に現場を調査した結果によるものです。医療空間は高密度に人と人がひしめき合っており、大きな不安と緊張感が渦巻いています。その中で一番気になる音は「人の話声」。

耳は常に開いた状態です。ときに聞きたくない他人の声もいやおうなく耳に入り込んできます。しかも人の声は聴覚の周波数帯域の中では一番感度の高い部分に入り込んできますから、簡単には無視することはできません。

従来のマスキング音源といえば、ノイズキャンセリングや同じ周波数同士の音を出して、マスカー(ノイズとなる音)を心理的に緩和することが多くありました。例えば、無意味音と位置づけられる「水の音」や「葉擦れ音」など。

でも病院空間にある人の声はそうした自然音だけでは決してマスキングすることはできません。そこで登場するのが「メロディ」なのです。公共空間では極度にセンチメンタル(ドラマティック)な音楽を流すのは御法度とされています。

今回、わりにメロディアスなピアノ曲を「敢えて」制作しました。全体的には明るいのだけれど、曲のなかにほんのり「(明るさとは拮抗した)暗めのメロディ」を入れてあります。メロディーはストーリー(物語)そのものです。そうした音を入れることで、一瞬「人の会話」が意識的に遠ざかる。そういう効果を目指して、『いのちのそばに』を制作したわけです。

その〝案配〟はいかに!?