水音とピアノを合わせる法 / '14.03.20

20140320ピアノの音と水音をうまく調和させることは意外に難しい。両者の周波数成分が大きく違うことが最大の理由だろう。両者ともに周波数の帯域は広いけれど、基本周波数がぜんぜん違うし、ピアノの打撃音と水滴はどちらも個性がありすぎて、まさに水と油のような関係。

それを合わせるにはどうしたらよいのか? 

ぼくが取った方法は、両者の音場を変えたこと。つまり、それぞれが聞こえてくる位置をずらすことで、音源の位置を棲み分けてみた。具体的にはピアノが真ん中から聞こえてきて、水音は周囲から聞こえるような工夫を凝らしてみた。

もう一つの方法は、両者の周波数の中で「うまく合いそうな」成分を強調したこと。具体的には、気持ちのよい中音域の成分を混ぜ込んでみた。そうすることで、両者の響きがまるで「糊」のようになって、溶け合うような感じになった。経験的に言って、ピアノと水の音はまったく調和しないと断言できる。それをどのように「混ぜ合わせるか」が、今回アルバムを制作する上で、一番難しかった。

写真はCDジャケットのウラ(バックインレイの表)のデザイン。竹下さよりさんが撮影した鴨川の水面(みなも)のミニマル感と曲名とのシンクロが見事なデザインで、とても気に入っている。何度も聴いて「飽きない」作品をつくるのが、ぼくが目指す着地点。この写真を見ると、そんな原点を思い出す。