環境音楽制作のコツ / '19.03.14

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これまで20年近くにわたって、環境音楽の制作を行ってきた。環境音楽とは、特定空間の背景に流れている音楽(いわゆるBGMと呼ばれるもの)であり、それ自体が目立ったり、注意されることのないような音楽(あるいは音楽に近い楽器音)のことである。

簡単にいえば、「聞き流すことのできる音楽」「聴くことに注意すれば、音楽として捉えることのできる音楽」といったところだろう。これまで多くのミュージシャンや作曲家が、この手の音楽を意識的につくってきており、日本ではとりわけBGMが巷でよく使われている傾向がある。

こうした音源を制作するコツを一言で言えば「ひっかかりのない音楽を目指すこと」と言えよう。曖昧で抽象的な表現であるが、世の中の音楽のほとんどは「ひっかかり=人の意識にのぼること、を想定した音楽」が主流である。ひっかからない音楽というのは、ともすれば「作り手にとっては不本意な音楽表現」である。

人間が特定の何かを表現しようとする背景には、人に届いてナンボのもん、という作為や欲求があるのは間違いない。環境音楽はその逆を行っているのだから、表現欲の強い人にとっては魅力のない音楽なのかもしれない。

とはいえ、この頃は環境音楽のような音楽形態に興味を持つ人たちが増えてきた。特定のジャンルではなく、人にゆるく認識される音楽のつくり方や使い方が意識されはじめて、とてもよろこばしいことだと、ぼくは思う。