音楽CDをCD屋に置かない理由。 / '14.05.03

20140503◎CD屋にCDを置かない理由

これまで制作した8枚の音楽CDはすべて「自主制作」であるため、自分だけでアルバムの計画・制作・流通を行っています。従って、流通も自分で開拓しなければなりません。その方向性は「リアル店舗」と「ネット販売」の2種です。最近はネット販売が主流ですが、ぼくは「京都」という地をモチーフにした楽曲制作をしているので、地元のリアル店舗を歩き回り観察し、店員と交渉して、大切な作品を聴きたい人の元に届けるように、最大限の工夫を重ねています。

そこで発見した極意は、「音楽CDはCD屋に置かない」こと。

流通システムをしっかりもっている大手の音楽会社なら話は別ですが、ぼくのように吹けば飛ばされるような零細活動をしている身にとっては、また音楽ジャンルとしても「目立つ」ことから距離を置いた「環境音楽」を軸に展開しているために、「淡くに溶け込んでしまう背景のような音楽」であれば、刺激の強い商業音楽を中心に展開する店舗に置けば、それこそ吹き飛んでしまうのです。だいたいそうしたCD屋では、刺激色の強いアップテンポの音楽が流れています。それでは、自分の音楽を聴覚的に手にとってもらえる空気感は、(ぼくのCDを目がけて購入しに来られる人は別にして)微塵も発生しません。

よって、自分が制作した音楽CDを置いてもらっている店舗は「雑貨系」「カフェ系」「書店系」「ミュージアム系」に絞っています。「雑貨系」ならば、商品音楽の競合がない。「カフェ系」ならば、店内で実際に音源をかけてもらうので、そのよさをゆっくり体感してもらえる。「書店系」ならば、精神的にゆったりした状態の人が多い。「ミュージアム系」ならば、文化的な色の濃い作品を求めてやってきている人が多い…。

ここまで前置きが長くなりましたが、ここからが本題。新作CD「キョウトアンビエンス 2」を、新たに「大垣書店イオンモールKYOTO店」に置いてもらえることになりました。この場所は初めて来たのですが、京都駅から近く、しかも空間がゆったりと落ち着いていて、大型商業施設らしからぬ、はんなりとした落ち着きがあります。京都有数の蔵書数を誇るこのお店の一角に、ほどよいセレクト色のCD・DVDコーナーがありました。この場所に納品したその日に、早速ディスプレイをしてもらいました。店長さんにも実際にCDを聴いていただいて、音楽に共感をいただきました。音楽制作のプロセスにもすごく興味をもってもらって、どこか深いところで新作アルバムを理解してもらっている実感が湧きました。

置くべきところに置かれた作品は、きっとしかるべきタイミングで、しかるべき人の元に行き渡ることでしょう。どこに音楽CDを置くのか、また、置いてもらっているスタッフの方々と、どこまでよいコミュニケーションができているか。その二つの軸が、作品流通の成功を物語っているのではないでしょうか。