< 京都タワー展望室リニューアル・音環境デザインプロジェクト >
このたび、京都タワー展望室の音リニューアルに際しまして、
私が音環境デザインのプロジェクトにかかわらせていただきました。
その詳細を、かいつまんでお伝えします。
なお、京都タワー展望室とは、地上100mの5F(T5)に存在する空間です。
皆さまのお越しを、心よりお待ちしております。
「環境音楽」とは?
展望室から見える風景をきれいに楽しく感じてもらえるきっかけとなる
音楽(音刺激)が、環境音楽です。
風景を引き立たせる隠し味のような役割を担っています。
「音環境デザイン」を施した展望室
風景は目で見るだけでなく、五感全体で味わうものです。
視覚で風景を眺める印象は、耳から入る音にも影響されています。
こうしたことから、展望室から見える風景を
最大限に引き出すために、徹底的に音にこだわりました。
音を意識して環境空間を計画する活動を「音環境デザイン」といいますが、
3つのポイントに配慮しました。(1)「静けさの確保」にこだわりました。
不必要な音を削減し、落ちつきのある音空間づくりに努めました。
これまで設置していたゲーム機やプリクラなどの装置を撤去し、
過剰な電子音の発生を抑えました。
この段階は、「マイナスの音デザイン」とよばれます。(2)「ひびきの抑止」にこだわりました。
室内で出される音のひびきは、
建築材料の音響特性に大きく影響されます。
音がひびきすぎると、不快感を与える原因となります。
そこで、床下に使われる材料に吸音性の高いカーペットを使用し、
音の過剰なひびきや、足音の発生を極力抑えることに成功しました。
カーペットのデザインは、「京都の碁盤の路」をイメージしています。
この段階は、「ハコの音デザイン」とよばれます。(3)「音による演出」にこだわりました。
展望室は、非日常的なムードの中で、
遠くの風景を存分に味わう空間です。
そこで、京都らしい雰囲気の演出を意識しながら、
時間帯(朝・昼・夜)、天候(晴・曇・雨)、四季(春・夏・秋・冬)の、
風景に調和した環境音楽を特別に制作しました。
また、音が存在感を出しすぎないように、
再生する音量や天井スピーカーの配置にも配慮し、
風景と音を感じる刺激のバランスを意識しました。
この段階は、「プラスの音デザイン」とよばれます。
2007年初頭に行われた京都タワー展望室リニューアルの際に、
音環境デザインが取り入れられたことによって、
展望風景が落ちついた印象に変わりました。
京都タワー展望室に来塔いただいた皆さまに、
山々に囲まれた京都盆地の景色をじっくり楽しんでいただけることを、
心より願っております。
■リニューアル前後における「京都タワー展望室」音環境【mp3音源データつき】
<リニューアル前>
![]()
写真1:リニューアル前のゲーム機類(写真提供:京都タワー)
閉空間の展望室内では、ゲーム機などの遊具器械音が発生する電子音や、
壁面スピーカから流れる京の通り歌などの音が、多くを占めていました。
いずれの音も持続音なので、喧噪感を強く感じる音でした。
また、床面にビニル系素材が使われており、硬質の靴で歩くと、
耳障りな足音が室内を反響しており、劣悪な音環境でした。
人の声も過剰に反響し、疲弊感の漂う印象がありました。
音源を聞かれると、電子音が空間中に充満しているのが体験できます。
【リニューアル前の展望室音環境(2006年8月9日13時台):mp3】
<リニューアル後>
![]()
写真2:リニューアル後の展望室概観
床面にカーペット上の素材を使用したので足音が抑えられ、
静かな音環境を形成することに成功しました。
また、遊具器械や壁面スピーカ(京の通り歌)を撤去したため、
耳障りな電子音の発生をなくすことができました。
環境音楽は、8基の天井スピーカから40dB程度で再生しています。
展望風景のおだやかさを引き立たせる
“隠し味”としての役割を果たします。
室内空間全体の音圧レベル(音量)が減少したので、
来塔者の会話が静かになっているのも特徴です。
音源を聞かれると、環境音楽が空間全体を包むのが体感できます。
【リニューアル後の展望室音環境(2007年6月25日13時台):mp3】
■関連資料(調査報告・論文等)
小松正史
京都タワー展望室の音環境デザイン・プロジェクト(1)
京都精華大学紀要33号、135-150頁、2007年 <本文PDF> <英語要旨PDF>
小松正史
京都タワー展望室の音環境デザイン報告
-リニューアル前後における音環境の量的変化-(2-2-06)
日本騒音制御工学会秋季研究発表会(東京都)2007年9月 <PDF>
小松正史
展望景観の評価に及ぼす環境音楽の効果
-京都タワー展望室における視覚と音の相互作用-
日本騒音制御工学会春季研究発表会(東京都)2007年4月 <PDF>
■関連CD『キョウトアンビエンス』の紹介
![]()
2007年10月、京都タワー展望室で流れている環境音楽を収録した
CD『キョウトアンビエンス』を発売しました。
展望室から見える風景を、きれいに楽しく、
平穏に感じてもらえるように制作しました。京都タワー展望室が好きな私は、四季折々に来塔していましたが、
ゲーム機器から流れる電子音が気になっていました。
まるで、空中ゲームセンターのようでした。
床が硬質なため、靴音や話声も過剰に反響し、展望風景が台無しに感じました。
自著などで音環境デザインの必要性を提案していた私は、
43年振りに展望室がリニューアルされることを聞き、
音環境デザインに携わるご縁をいただきました。
「音環境デザイン」とは、音を切り口に特定の空間を
総合的に改良する環境計画のことです。展望室の音環境デザインは、
「静けさを確保するためのゲーム機の撤去」、
「ひびき抑止のための床面カーペット導入」、
「風景を引き立たせるための環境音楽による演出」の3点に配慮しました。
環境音測定や意識調査を行い、環境音楽を完成させ、
心理実験を実施し、時間や季節に調和した選曲に配慮しました。
そして2007年春に工事が完了し、展望室の音環境デザインが実現しました。CD『キョウトアンビエンス』は「環境音楽による演出」として、
現場で使用されています。
淡色系ピアノを10曲収録し、ポスター解説書が特典として封入されています。
「音環境デザイン」、「環境音楽」、「展望室の平面図」の詳細がつかめます。展望室にご来塔されたみなさまが京都盆地の風景を楽しまれるとともに、
CD『キョウトアンビエンス』が、京の旅を思い出すアイテムとなることを、
心より願っております。
→CD『キョウトアンビエンス』の紹介はコチラ
■京都タワーのHPはコチラ