音創のご紹介 / Soundscape Design

soundscape_title03音創とは「音を創ること」の造語で、
音風景をデザインすることを意味します。
(音創=soundscape design)

「音育」や「音学」は、
「音創」を実現させるための一連の活動行為であり、
現場の音環境を改良することが一つの到達目標です。

耳を磨き(=音育)、音を分析し(=音学)、
その後、音に手を施す段階が「音創」です。

家を造るとき、店をはじめるとき、まちづくりをするとき…。

《サウンドスケープ》の考え方を、
それぞれの人の活動の中に加えていくと、
新たな発想力が生またり、
状況が好転するメリットがあります。

■出典:小松正史『サウンドスケープのトビラ』(昭和堂、2013年)


音風景デザイン、3つの方法

音をへらす《マイナス》の音風景デザイン)
・静けさを保つために不必要な音をなくす段階

ひびきの調整《ハコ》の音風景デザイン)
・室内で発生する音のひびきを調整する段階

音をふやす《プラス》の音風景デザイン)
・演出音や情報音などを加える段階

音風景デザインの優先順位(左から高い順)

マイナスハコプラス

*音風景のデザインで注意すべきことは、
音以外の感覚や雰囲気に配慮すること。
人と人の関係性や地域の風土を活かし、
違和感のない音創りを目指しましょう。

音創1
音風景デザインが施された
「京都国際マンガミュージアム」

「音風景デザイン」のケーススタディ

小松正史が手がけた「音風景のデザイン」の事例を紹介します。
各事例とともに、現場空間での音の観察や意識調査を重ねたのち、
《マイナス》《ハコ》《プラス》の方法を設定し、施行します。
興味のある方は、是非現場で音のひびきを体感してみて下さい。
(音環境デザイナーや音風景デザイナーの立場で実践しました)

《 京都タワー展望室の音風景デザイン 》
ー 音による空間のリノベーション ー

■概要

  • 対象:地上100mに位置する展望室(80㎡)
  • 工期:2006年9月〜2007年3月(1964年竣工、2007年改修)
  • 調査:工事前後よる効果測定・演出音を用いた心理実験を実施

■コンセプト

風景は目で見るだけでなく、五感全体で味わうものです。
視覚で風景を眺める印象は、音からも影響を受けます。
展望室から見える風景を最大限に引き出すために、
徹底的に音にこだわりました。

■施工方法のポイント

マイナスの音風景デザイン(静けさの確保)
不必要な音を削減し、落ちつきのある音づくりに努めました。
アーケードゲーム機などを撤去し、電子音の発生を抑えました。

ハコの音風景デザイン(ひびきの抑止)
床下に使われる材料に吸音性の高いカーペットを使用し、
過剰なひびきや、足音の発生を抑えることに成功しました。

プラスの音風景デザイン(環境音楽による演出)
京都らしい雰囲気の演出を意識しながら、
風景に調和した環境音楽を制作しました。
再生音量や天井スピーカーの配置にも配慮しました。

*環境音楽について
展望室から見える風景をきれいに楽しく感じてもらえるための
演出音として、小松正史の制作した環境音楽を導入しました。
展望室の風景を引き立たせる隠し味のような役割を担っています。

音創2
音創3

リニューアル前

音創4

■リニューアル前の展望室(写真提供:京都タワー)
ゲーム機、京の通り歌、足音などがきこえます。

リニューアル後

音創5

■リニューアル後の展望室
静けさが確保され、環境音楽などがきこえます。


《 京都国際マンガミュージアムの音風景デザイン 》
ー 元龍池小学校を想起させる音のデザイン ー

■概要

  • 対象:地上100mに位置する展望室(80㎡)
  • 工期:2006年9月〜2007年3月(1964年竣工、2007年改修)
  • 調査:工事前後よる効果測定・演出音を用いた心理実験を実施

■コンセプト

館内に落ち着きを与え、書物や資料をゆったり閲覧する雰囲気を高め、
元龍池小学校の歴史性を想起させる音風景デザインを行いました。

■施工方法のポイント

マイナスの音風景デザイン(静けさの確保)
新たに設置した空調機や電気設備から発生する機械音を、
極力抑えることに努めました。

ハコの音風景デザイン(ひびきの抑止)
フロアのゾーニングに応じて、床面の足音に変化をもたせました。
エントランスや階段には木床を使い、足音によるにぎわいを創出。
渡り廊下にはカーペットを使用し、ひびきの発生を抑えました。

プラスの音風景デザイン(環境音楽による演出)
懐かしさを思い出すピアノの音色による環境音楽を制作しました。
なごみのあるメロディが、ゆったりしたテンポで繰り返されます。
音数を極力少なくしたので、広がりある余韻を感じていただけます。

■「京都国際マンガミュージアム」の音環境の特徴

全館を通じて同一の環境音楽が、
約40基の天井・壁に埋め込まれた
スピーカーから小音量で流れています。
館内のノスタルジーな雰囲気に調和する環境音楽。
私がとくに意識した場所は、階段踊場付近です。
白壁が独特の反響を誘発するために、
心地よい余韻が生まれ、館内の空気が凛と輝きます。
階段が木製であるため、足音が環境音楽に溶け込みます。

音創9
音創10
音創11
音創6
音創7
音創8