ピアノ / '16.12.30

ぼくがおもに演奏する楽器はピアノなのだけど、どうしてこの楽器に惹かれてしまうのか、ほんとうに不思議である。もともと電子オルガンをやっていたときも、「いつかはピアノを!」とずっと思っていた。

ピアノの魅力を一言で言えば「脱個性」だろう。ぼくはピアノを88鍵の打楽器と思っているので、基本だれが叩いても「ド」の音は「ド」である。猫が鍵盤の上を歩いても、ピアニストが同じフレーズを弾いても、物理的には変わらない。

ピアノの魅力のもう一つは、音域が広いことだろう。一応楽音楽器としては、一番幅広く音を出せるものだ。もうこれだけでオーケストラ的演奏は出来るわ、単旋律でグイグイ演奏出来るわ、打楽器的にパーカッシブに演奏出来るわ、で、出来るごとずくめ。

さらにピアノの魅力を考えてみると、やはり「音色」にあると思う。無色透明というか、個性がないというか、そこがたらまなくいい。といいつつも、倍音がまるで「見える」かのように、豊かに響きわたることも素晴らしい。しかもあのような大きな筐体である。

つまるところピアノの魅力は、誰が弾いてもそれなりの音が出ることと、透明な音色のひびきを余すところなく堪能できることだ。そんな魅力に取り憑かれて、飽きることがない。弾けば弾くほど奥深さを感じ、「一生かかっても弾きこなせるわけないな‥」とため息をつきつつ、たじろいでしまうのである。